人知れずダメージを受けながら、ピーピーピー、と洗濯機が止まる音を聞く。

紫苑先輩に耳を引っ張られている日向先輩は、それでもなお、私を疑うような視線を緩めない。


「でも彼氏じゃないとしたら、……あ! ちょ待って、まじ俺分かったかも! 村瀬? 村瀬に口説かれてる?」

「はあ?」


何でそこで村瀬さんが出てくるんですか、と呆れながら洗濯機の蓋を開ける。

中身を取り出そうと手を伸ばせば、その手はパシッと掴まれた。


「え」


顔を上げると、さっきまでドアの前で石を並べていたはずの真央くんが困惑したような表情を浮かべながら、私のことを見ていた。

雲ひとつない青空の下、朝から恋バナをする四人の高校生。この字面だけ見るとちょっと楽しそうな感じがするけれど、私には彼氏なんていないし、村瀬さんに口説かれているという事実もない。あと、洗濯機を囲みながらしている時点で色気がないような気がする。

何となく残念なこの状況に何も言えないでいると、紫苑先輩が目を輝かせた。


「そうなの? 葵ちゃん、村瀬に口説かれてるの?」

「いやいや、違いますよ、無言を肯定と捉えるのやめてください……」