「怪しい」


カラカラカラカラ、脱水中の洗濯機から音が鳴る。

残り二分と示された画面を見つめながら、何がですか、と日向先輩に聞き返せば、じっとりとした視線を送られた。


「葵、お前さ……」


朝七時半。五号館二階奥の空き教室のベランダ。


「彼氏できた?」

「は?」


思わず素で返してしまった。先輩相手に失礼だったか、と言ったあとで思ったけれど、それよりも今はやけに神妙な顔をしている日向先輩の真意を確かめるほうが先だ。

だんだんゆっくり、静かになっていく洗濯機の音を聞きながら、私は日向先輩へと視線を向けた。


「なんか最近嬉しそうだし、明るくなったよな!」

「え」

「入部してきたときの根暗な感じがなくなってき……痛い痛い何すんだ紫苑先輩!」

「あのねえ、使う言葉を選びなさい」


ね、根暗……。いやまあ確かにそれは間違いではないのだけれど、何だかこう、グサッと鋭利なものが心に突き刺さったような気が……。