そこまで言って、はた、と止まる。

桜さんが不思議そうな顔をしている。私はそれを見て、やってしまった、と心の中で頭を抱えた。

調子に乗ってしゃべりすぎた。桜さんが優しいからって、つい気が緩んでしまった。友だち少ないって連呼しすぎたし、これ全然フォローになっていなかったような気がする。言葉は少なく、短く。そう思っていたはずなのに。

長く伸ばした前髪で壁を作りながら猛省する。桜さんと紫苑先輩の視線がこちらを向いているのを感じた。


そのときだった。



「よかったあ、そしたら私たち仲間だね!」

「へ」


部屋に響いた優しい声。咄嗟に顔を上げると、目の前にいる桜さんがほっと胸を撫で下ろしていた。

仲間、って。友だちが少ない者同士、ということだろうか。

それはあまり良いものではない、というかすごく残念な仲間のような気がしたけれど、桜さんは嬉しそうに笑っている。そっと視線をベッドの上にいる紫苑先輩へと移すと、紫苑先輩はそんな桜さんを見て優しく微笑んでいた。

その笑顔があまりにも綺麗で、黒曜石みたいな瞳は温かさに溢れていて、私は思わず見惚れてしまった。


「実は私ね、なかなか学校に行けてなくて。こうやって遊びに来てくれたことがすっごく嬉しいの」

「え、あ、……そうなんですか?」

「うん。だから、もし良かったらなんだけど……」