変なこと聞いてごめんね、ともう一度謝られて私はようやく理解した。

はじめまして、で合ってるかな?

さっき玄関で桜さんにそう聞かれたのは、確認のためだったということか。


「あ、いえ、全然大丈夫です……!」


なるほど、そういうことか、と納得して返事をする。申し訳なさそうに眉を下げていた桜さんは、私のそれを聞いて安心したように息を吐いた。


「それにしてもびっくりした。友だち連れて来る、って紫苑ったら突然言い出すんだもの」

「突然じゃないわよ、二日前には言ったじゃないの」

「そういうことじゃなくて。今まで紫苑が誰かを紹介してくれたことなんてなかったじゃない」


ぷう、と頬を膨らませた桜さんに、紫苑先輩は首を傾げる。そうだっけ、そうだよ、と二人が言い合うのを眺めながら、私はお茶に口をつけてもいいものなのか否か悩んでいた。


「恋人でも連れて来るのかと思って、ちょっと身構えてたんだから。あ、葵ちゃん全然気にせず飲んでね」

「わっ、え、あ、ありがとうございます」


気づかれていたことに少し恥ずかしさを感じながらも、ありがたくお茶を飲む。濃い目に淹れてもらった緑茶は、甘ったるい羊羹にとてもよく合った。

紫苑先輩はというと、拗ねたような口ぶりにくすくすと笑っていた。