いつの間にか解除したらしく、自動ドアが閉まらないように立っている紫苑先輩の元へと駆け寄る。

私が隣に並んだことを確認した紫苑先輩は、そのままエレベーターに乗り込み、慣れた様子で六階のボタンを押した。


「十五階まであるんだ……、大きいマンションですね」


ドアの上の数字にランプが点いて、それがどんどん右へと進んでいくのを見つめて呟くと、そうかしら、と紫苑先輩は首を傾げた。

高校の最寄り駅から急行に乗って三駅。居酒屋と定食屋が数件、学習塾、コンビニのある駅前から少し歩くと小さな商店街があり、そこを抜けるといくつかのマンションが道沿いに建っていた。その中でも一番背の高いこのマンションが、私たちの目的地だったようだ。


「ついたわ」


チーン、とレトロな音がして、エレベーターのドアが開く。先に降りた紫苑先輩は、迷うことなくその階の一番東側のドアへと歩を進め、インターホンを押した。

と、同時に。家の中から何やらどたどたと足音が聞こえてきた。


「……?」


これ大丈夫なんですか、と視線で訴えれば紫苑先輩は苦笑いを浮かべる。

そして数秒もしないうちに、勢いよく目の前のドアが開いた。