ぶんぶんと手を振って私たちを呼ぶ日向先輩に、慌てて返事をしながら駆け寄る。
「じゃあな村瀬!」
「おー」
意気揚々と歩き出した日向先輩、くるくると日傘を回しながらその後ろをついていく紫苑先輩、面倒くさそうに歩く真央くん。
定位置である先輩二人の間に並ぼう、と足を踏み出した私を、葵ちゃん、と村瀬さんの小さな声が呼び止めた。
何ですか、と首を傾げれば村瀬さんはまた私に合わせるように膝を曲げて、自分の口の横に手を添えて。
「……また、ちょいちょい三浦の様子教えて」
耳打ちされたその声はとても低く真剣なもので。
私は、疑問を抱いたり照れたりする余裕もなく、ただ神妙に頷き返すことしかできなかった。
「……よっし、あとはサッカー部だな」
野球部から回収した洗濯物を真央くんに持たせて、もうすぐ雨降りそうだし急ぐぞ、と日向先輩は言った。
確かに雲行きは怪しく、空を覆い尽くしている分厚い雲よりも一段と色の濃い雲が頭上へと迫ってきている。
「ねえ、それ行く必要あるかしら」
日向先輩の言葉に、そうですね、と頷きかけた私。それを遮るように紫苑先輩は眉を寄せた。