後ろで言い合いをしていた先輩たちが、ようやく村瀬さんの存在に気付いてこちらへやって来る。
よっと手を挙げた日向先輩に、村瀬さんは私と視線を合わせるために曲げていた膝を伸ばし、手を挙げて応えていた。
「三人で何話してたんだ?」
「ん、まあちょっと世間話。つか、今日めっちゃ曇ってんのに紫苑さん日焼け対策ばっちりっすね」
「くもりのときの紫外線馬鹿にしてんじゃないわよ」
自分へと向いていた視線が二人へ向いてほっと息を吐くと、いつの間にか強張っていた肩から力が抜けた。
日向先輩や紫苑先輩、真央くんと話すことには、少しずつ慣れてきたような自覚がある。でも、普段あまり話さない人と会話をするのはやっぱり下手くそのままだ。
前はもっと上手く話せていたような気がするのに。
一度動き出すと止まらない私の口は、注意しないと余計なことまで話し過ぎてしまうから、言葉は少なく、短く。そう意識すると、結局何も話せない、もしくは何も話さないまま時が過ぎていく。
だからきっと、こうやって笑顔で話しかけてくれる村瀬さんのような人は貴重なのだろうけれど――。
「おーい、葵、真央! 次行くぞ!」
そんな声に、ハッと我に返って顔を上げると、どうやら先輩たちは村瀬さんと話し終えたようだった。