どういうこと、だろう。
私はただ、彼の奥にある空き教室に行きたいだけだというのに。
彼から向けられている感情はあまりにも強く、まるで私がここに来ることを拒絶しているような、そんな感じがする。
怯んで固まる私を気にも留めず、両肩を掴む力は弱まることを知らない。
私は頭から冷水をかけられたように、サッと血の気が引いていくのを感じた。
突然向けられた拒絶に、口の中の水分がなくなっていく。代わりにうっすらと涙が膜を張った。
「わ、わた、わわ私は、あの」
それでも何か言わなくては、と口を開いたときだった。
「…………、……っ」
ヒュウ、ヒュッ、ヒュウッと美青年の口から息が零れた。
「……え」
驚いて、瞬きをひとつ。じわりと膜を張っていた熱い涙が、瞼に一掃されて視界が鮮明になる。
私の目を覗き込むようにしていた美青年は、口を大きく動かして、私に何かを訴えていた。