ていうか、そうじゃなくて。
「ちょっと!さっきから何なの、あんた!見知らぬ人にあげる食べ物なんて持ち合わせてないんだけど!」
警戒心剥き出しでキッと睨むと、男子は「おお、悪い」と軽く謝ってくれた。けど、軽い。
「俺、雪(ゆき)っていうんだ!日本人なんだけどしばらくアメリカに住んでて、昨日日本に戻ってきたんだ」
アメリカ……。なるほど、それでこっちとかあっちとか。
こっちが日本のことで、あっちがアメリカを指していたのか。
それにしても、帰国子女という人に会ったのは初めてだ。
「あ、ちなみに英語はできない!向こうでは感覚で会話してたから!」
――ガクッ。
きっと、あたしの背景にはこんな効果音がぴったりだ。
まさしく「じゃあ、英語ペラペラなんだね」という言葉をかけようとしたのに。
「君は?」
「あ……あたしは、なずな。春風なずな」