今なら、きちんと話を聞いてくれそうだ。


あたしと雪くんはただの友達で、告白はされたけどそういう関係なんかじゃない。
雪くんも、今度のうちのサッカー部との練習試合のあとに、椿くんに謝ろうとしてたんだよって。


優しい椿くんなら、きっとわかってくれ……。



「ああ、そうだ。この前の告白、なかったことにしてね」



……え?


制服をたたんで、バッグの中からスポーツドリンクとタオルを取り出す椿くん。


「昔のこととはいえ、親友の彼女に手を出す趣味とかないからさ」


そう言った椿くんの声は、相変わらず抑揚のないものだった。いや、少し刺々しく聞こえたような気もする。


そうだよね、馬鹿だあたしは。
雪くんと話をすると言っておきながら、あんな場面を見せてしまったんだから、昨日の今日で許してくれるわけがない。


でも、告白をなかったことに、なんて……できないよ。


だって、あたしも椿くんが好きなんだもん。