「……お、おはよう、椿くん」


「……」


次の日。部活の朝練がある椿くんに合わせて、あたしはいつもより早く登校した。


まだ誰もいない教室でしばらく待っていると、ガラリとドアが開いて椿くんが入ってきた。


椅子から勢い良く立ち上がり、思いきって挨拶をしたのは数十秒前のこと。


椿くんは、あたしをじっと見つめて、こっちに向かってくる。
そして、あたしの隣の自分の席にバッグを置くと、練習着に着替え始めた。


「つ、椿くん、あの……」


スミレと喧嘩をした時みたいに、無視されてしまうのか不安だけど、ここで引いてたらダメだ。


椿くんと雪くんの間に、さらに大きな溝を作ってしまったのは、まぎれもなくあたしなんだから。


「おはよう、春風さん」


「!」


あたしの不安はよそに、椿くんは意外にもすんなり挨拶を返してくれた。