ランニングの列から抜けて、雪くんがあたしの元に駆け寄ってくる。
「なずな!久しぶりだな、どうしたんだよ」
「うん、ちょっと雪くんに話が……」
話したいことがあるのはそうなんだけど、あたしはどもってしまう。
体操着姿の雪くん。もしかして部活中かな、と考えると邪魔するのも申し訳ない。
「やっぱり、今度でいいや」
苦笑するあたしに、雪くんは何かしら察したのか先輩に声をかけた。
「すいません、すぐ戻るんで先行っててください」
「あんまり遅くなるんじゃねーぞ」
「はい」と雪くんが返事をしたのを確認して、先輩は他の部員を引き連れ、再び全員でかけ声をしながら走っていった。
「あっちの木陰に行こっか。俺、あっちぃ」
「うん」
服の襟元で顔の汗を拭う雪くん。
足元を見れば、普通のスニーカーではなくサッカーで使うスパイクを履いている。
雪くんがサッカー部であることは明白で、同時に本当に山茶花くんだったらと思うと、胸が苦しくなった。