朝になり、幸せな気持ちで学校に行くと、あたしはグラウンドを見るなり目を丸くした。


「へい、パス!」


「シュート!」


そんなかけ声が聞こえてくるグラウンドでは、いつものようにサッカー部が朝練をやっている。


その部員の中には、今まで見なかった人の姿がそこにいた。


「椿、ナイシュー!」


「ありがとうございます!」


先輩に褒められ、嬉しそうに笑うのは……そう、椿くん。


サッカーボールを操りながら、部員達と走り回る椿くんに、あたしはなんだか泣きそうになってくる。


ブランクがあるせいで周りよりもミスは多いし、すぐに疲れてしまってるけど、それでも楽しそうだったから。


思わず練習をじっと見ていたあたしに、椿くんが気づいたのか目が合った。


すると、椿くんは笑顔で、あたしにピースをしてみせる。
あたしも釣られるようにピースサインを送ったけど、椿くんのその姿は前に見た写真そのものだった。


小学校の時の椿くんと、そして椿くんの親友の山茶花(さざんか)くん。


あの写真さながらに、今も隣に、椿くんの親友がいてくれたら……。


すごく嬉しい気持ちとは裏腹に、そんな切ない気持ちにもなってしまった。