脳裏によぎるのは、椿くんに言われた言葉。
『自分にとって友達はその子しかいないってわかったら、それってもう“ 本当の友達”と同じなんじゃないかな』
あたしには、スミレと芹香しかいないんだ。
『春風さんは最初からずっと、染色さんと“本当の友達”になろうとしてたんだよ』
ひねくれた考えをしながらも、あたしは、本当は。
心から“友達”だと呼べる存在が、誰よりも何よりも、ただ欲しかっただけなんだ……。
〈……そんなの、当たり前だよ〉
耳元に当てたスマートフォンから届いた声。
それでやっと、電話が繋がりっぱなしだったことを思い出す。
〈なずなのバカ〉
鼻をすするような音と共に、芹香が穏やかに言った。
目の前のスミレも、嬉しそうに微笑んでいて。
「こちらこそ、改めてよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げたスミレ。
そして……。
“お誕生日おめでとう”。
顔をあげたスミレと、受話器の向こうの芹香が、ほぼ同時にそう言ったので、あたしは驚いてつい笑ってしまい。
そして、嬉しさのあまり泣いた。
スミレ、芹香、ありがとう。
あたしは今日、“本当の友達”という最高のプレゼントをもらったんだ。
今までのどのプレゼントよりも、嬉しくて、大切なものだよ……。