「春風さん」
ガタッと隣の席の椅子がひく音と共に、名前を呼ばれた。
声で誰だかわかったけど、改めて顔を見ると、なんだか目頭が熱くなってきてしまう。
「……椿くん……」
「何かあったの?染色さんと……」
心配そうに眉を下げた椿くんに、そんなふうに、落ち着いた声でそっと問いかけてくれたら。
椿くん、あたし、全部話したんだ。
あたしが芹香のことをどう思っているのか。あたしが“友達”がどういうものだと思っているのか。全部。
そしたらね、とうとうスミレに嫌われちゃったよ。
いっぱい言いたいことがあって、たくさん聞いてほしいんだけど、2日ある休みのうちのたった1日だけで先週と大きく状況が変わってしまった。
どこからどう話していけばいいのか迷っていると、芹香が教室に入ってきた。
「おっはよー!」
寝たら土曜日のことなんて忘れたのか、それともあえてそう振る舞っているのかわからないけど、芹香はいつもと変わらず元気いっぱい。