「八潮芹香(やしお せりか)です。よろしくお願いします」
ポニーテールにした長い髪を揺らして、転入生として紹介されたその女子は一礼した。
まだわからないけど、第一印象は気が強そう。
目もとが釣り上がっているし、やたらとハキハキした口調。おまけにポニーテールという元気な女子にぴったりの髪型。
蘭みたいな、計算高そうなところはまだ見受けられないけど、人間見た目じゃわからないものだ。
絶対、絶対に仲良くなんかしてやらない。
どうせ、勝手に他のクラスメイト達と仲良くなれそうな感じだし、あたしはほっといていよう。
うん、そうしよう。関わらなければ、“友達”を取られることもないだろうしね!
あたしが心の中で決意を固めた時、不意に八潮芹香と目が合い、笑顔を向けられる。
だからあたしも、完璧な“営業スマイル”で返してやった。
何が何でも、あたしの平穏を邪魔させないんだから。
そう、強く思いながら。