そう思って声をかけようとした時、男子はくるりとこちらを振り返り、目が合った。
『!』
どうしていいかわからず、あたしは軽く会釈する。
今は違う学校の名前も知らない人だけど、もしかしたらお互い合格して同じクラスになったりするかもしれないから。
悪い印象はあまり与えないように気をつけながらその場をあとにしようとした時。
『何でここを受けようと思ったの?』
あのさ、と声をかけられ足を止めると、そんなことを訊かれた。
生まれつきなのかわからないけど、茶色がかった長めの髪の彼。
前髪の隙間から覗く目が、まっすぐにあたしを見つめていて、思わずドキッとしてしまった。
『えっ、と……。何でって言われても……』
彩芽と蘭と離れたかったから、なんて言えない。
というか、何でそんなことわざわざ訊いてくるんだろう。