いつになく優しい椿くんの声のおかげで、あたしも素直に自分の非を認めることができた。
「……それと、椿くん」
「何?」
あたしは、椿くんの目をしっかりと見て、少し笑顔を浮かべて言った。
「ありがとう。昨日のあのあと、あたしのこと庇ってくれて……」
思えば、椿くんに笑顔で話したのはこれが初めてだったような気がする。今まで、椿くんに毎度のようにイライラさせられていたから。
だからかわからないけど、椿くんが心底驚いたように目も口も開けたまま、ぽかんとしている。
もしかしたら、椿くんは根っからの悪い人ではないのかもしれない。
きついことを言ってくるのは、本当にただ、あたしの“友達”に対する態度が気に入らないからで、だからあたしのことも嫌いなだけ。
だけど、そんな嫌いなあたしにまで、必要以上に傷つけてしまったと思った時はこうして謝ってくれる。
あたしは、第一印象のせいで、椿くんという人を少し誤解していたのかもしれないな。