「でで、出た出た!どうしよう!!」


リビングに飛び込んで、ソファでテレビを見ているお母さんの隣に座った。


突然叫びながら現れた私に驚いた様子で、お母さんは首を傾げる。


「出たって……何が?ゴキブリでも出たの?部屋を綺麗にしてないから出るんじゃないの?掃除をしてもすぐ散らかすんだから」


スナック菓子を口に運んで、言わなくても良い嫌味をチクリ。


「そんなんじゃ……お母さんに言ってもダメか」


「そうそう、ダメよ。部屋は自分で掃除しなさい」


何を言っても、見事なくらいに噛み合わない。


もっとも、幽霊が出たなんて言っても、信じてはもらえないだろうけど。


こんな話を信じてくれるのは、南部君か向井さんしかいないけど……言ったところでどうすれば良いんだろう。


怖くて部屋に戻れない事に変わりはないし、そうなるとここで寝るしかない。


でも、リビングって……広いから、怖いんだよね。


「ほらほら、早くお風呂に入りなさいよ」


帰って来てからそればかり。


私だって入りたいけど、幽霊が現れた事で、昨日の夢を思い出してしまうから。


出来るだけ引き伸ばしたかったけど、お母さんのプレッシャーには勝てなくて。


仕方なくお風呂に入る事になった。