「ただいまー」


向井さんと家の前で別れて、玄関のドアを開けた私は、帰りが遅くなってしまったから、小さな声で呟いた。


一応お母さんにはメールを入れておいたけど……携帯電話の時計は20時30分。


もしかしたら怒られるかもしれない。


そーっと部屋に戻ろうと、リビングのドアの前を横切った時。


「あら、菜々ちゃん。随分遅かったのね。こんなに遅いなんて、お母さん思わなかったわ」


やっぱり言われた。


昨日は学校に忘れ物を取りに行くって言って、すぐに帰ってきたから言われなかったけど、今日は勉強を教えてもらうって言っただけだからなあ。


「べ、勉強を教えてもらってたんだけど、解けるまでは帰っちゃダメだって言われて……遅くなっちゃった」


本当は勉強なんてしてないんだけど、こう言わなきゃ、お母さんは納得してくれそうにないから。


「そう。だったら良いわ。早くお風呂に入りなさい」


良かった、怒られずに済んだ。


逃げるように階段を上がり、自分の部屋に向かった。


それにしても、今日は色んな話のネタが出来たな。


これなら、いつ幽霊と話をしても大丈夫だと思いながら、部屋のドアを開けると……。











部屋の奥、窓の前に……それはいた。