どうしよう、ドキドキする。


南部君の事が好きなのに、それとはまた違ったドキドキに支配されて動けない。


どうしたんだろう……嫌なら押し退けられるはずなのに、それも出来ない。


そして……。














コツン。














え?あれ?


私の予想を裏切るように重なったのは……私と向井さんのおでこ。


てっきりキスされると思ったのに……。


「びっくりした?いくら俺でも、菜々の気持ちを無視してキスなんてしないさ」


フフッといたずらな笑顔を浮かべて、私から離れる。


ドキドキが治まらないまま、触れたおでこに手を当てて、向井さんを見た。


何も言えずに、ただぼんやりと。


「刺激が強すぎたかな?お姫様には眠っている時にキスするのが決まりだろ?」


こんな時にも、冗談みたいな事を言って。


でも助かったな。


今、キスなんてされたら、確実に向井さんの事も気になってしまうから。


強引にはしてこない所が、意外と紳士なのかなと思えた。


「も、もう!びっくりしたじゃないですか!」


「驚いた顔も可愛いよ、菜々」


私をあしらうように、ポンポンと頭を撫でて。


そんな冗談を言い合いながら、私達は家へと向かった。