「ごちそうさま。あー、美味しかったぁ」


久し振りに食べた、お母さんが作った以外のカレー。


その家その家の味があって、なぜだか我が家のカレーよりも美味しく感じる。


「良かった。森川さんが美味しいって言ってくれてさ」


ホッとした様子で、足を伸ばしてくつろぐ南部君。


緊張していない素の南部君を、この部屋に入って初めて見たような気がするよ。


その姿は私の緊張もほぐしてくれて、やっと肩の力を抜く事が出来たよ。

時計を見ると、もう19時で。


今から行っても、走らない限りは間に合いそうにないから、この作戦は成功だったと言えるかな。


「ん?ああ、もうすぐ時間だね。どう?まだ二回目をしたいって考えてる?」


時計を見上げる私を見詰めて、優しい笑顔で尋ねる。


「今は……大丈夫。だけどね、どんな事も幽霊との話のネタになるって考えてしまうかな。重症だよね」


その笑顔に照れてしまって、思わずうつむいてしまう。


お腹がいっぱいになったら、また南部君を意識してしまって。


変な食べ方をしてなかったかなとか、行儀が悪くなかったかなと、色んな事を考えてしまう。


他の男子を良いなぁと思う事は何度もあったけど、この感情は今までのどれにも当てはまらない。