「あの人は……ああ見えて冗談は言わないよ」


そう言われると、それはそれで恥ずかしいな。


あんな大袈裟に、冗談っぽく言ってた事が本気だったなんて。


「でも、皆に言ってそうではあるけどね。向井さん、モテそうだし。そう言えば何時くらいに来るの?」


チラリと壁に掛けられている時計をみると、16時過ぎ。


別に向井さんに会いたいわけじゃないけど、南部君と二人だと間がもたない。


無駄に明るくて、騒がしい向井さんがいてくれた方が、私としてはありがたいんだけどな。










「先輩は来ないよ。だって言ってないから」









時計を気にしていた私の不意を突くような言葉。


どういう事?


南部君と向井さんの二人で、私を止めてくれるんじゃ……。


「お、俺は先輩が来るなんて言ってないけど……嫌?」


あぁ、私が勝手に来ると思い込んでただけで、確かに南部君は言ってないような気がする。


「嫌じゃないんだけど……南部君は私と二人で気まずくない?」


「ぜ、全然!むしろ嬉しいかな。さっきも言ったけど、森川さんは人気があるんだよ?他のやつらが知ったら、泣いて悔しがるよ」


「そ、そうなんだ……南部君も、私が他の人の家に行ったら悔しがるの?」