ここから、生徒玄関に向かって歩きながら、幽霊に話し続ける。


簡単なように思えて、幽霊に話すなんて、いざやってみると怖くて声が出ない。


でも、話さなければどうなるか分からないという気持ちが、口から言葉を押し出した。


「さ、寒くなってきたね。もう冬だから当然かもしれないけど……」


音楽室の前から、階段に向かって歩きながら、当たり障りのない事を話してみる。


フーフーと、幽霊が吐く息らしき風が、私の首に当たる。


その都度、ゾクゾクッと背筋に悪寒が走る。


階段を境に、こちら側だけ蛍光灯が切れていて、暗い廊下を幽霊と歩いてるってだけでも怖いのに……。









ズズッ……。






ズズッ……。











引きずるような足音と吐息が、私に焦りを生じさせる。


「わ、私の友達が外で待ってくれてるんだ。昨日ここに来た女の子も、私の友達だったんだ」


幽霊相手に、何を話せば良いんだろう。













「ソウナンダ……」












「ひっ!」


耳元で聞こえた、人のモノではないような声に、思わずひめいを上げてしまった。


ダメだ、質問されてはいけないって聞いたけど、このままじゃいつか質問されてしまう。