私が断ると思わなかったのか、伸ばした手をスッと降ろし、軽く咳払いをする。


「無理に決まってるでしょ。俺達があれだけ言ったのに、ここにいるんですよ?」


呆れた様子で、溜め息混じりに向井さんに呟く南部君。


そうは言ってても、ここにいるって事は、私を止めに来たんだろうな。


「南部君も向井さんもごめん。せっかく来てくれても、私は行くからね」


職員室にいるであろう先生に、教室に忘れ物を取りに行くと言って、それから音楽室に行かなければならない。


残り時間はそんなにないから、ここで足止めされたくないのだ。


「分かってる。どうせ今日止めても、明日も明後日も、成功するまで何度でもやろうとするんでしょ?」


私の考えはお見通しみたいだね。


分かってるならどうして来たんだろう?


「もしかすると、菜々が何も知らないのに願いを叶えようとしてるんじゃないかと思ってね。来て良かったようだね」


確かに。二人が来なかったら、私はやってはいけない事をやっていたかもしれない。


「教えに来てくれたんだ……ありがとう。私、何だかやれそうな気がしてきた。二人はここで待ってて。絶対に成功させて戻って来るから」


それでも向井さんは、何度もしつこく止めようとしていた。