彩乃のように身体が溶けてるわけじゃない。


パッと見では、どこにも異常があるようには見えないけど……向井さんの話だと、この人もおまじないに失敗したんだよね。


「……は……にいる」


「……は……にいる」


同じ事を何度も何度もブツブツと呟いているけど、早口で何を言っているかは聞き取れない。


「あ、あの……友達を助けたいんですけど、どうすれば……」








「……は……にいる」



「……は……にいる」








ダメだ。


話にならない。


私の方を向いてはいるものの、質問に答えてくれるような雰囲気じゃない。


「やっぱりダメか。菜々の役に立てればと思ったんだけど。こいつがこんな調子じゃ無理だよな」


あんなに明るい向井さんが、寂しそうな目で弘志さんを見ている。


そっか……そうだよね。


ここに来るまでは、弘志さんと向井さんがどんな関係なのかは分からなかった。


でも、二人が友達だという事は、向井さんの言葉を聞いて分かったから。


私が彩乃をどうにかして助けたいと思ってるように、向井さんも同じ事を考えているんだろうな。


「弘志さんを助ける方法があったら、知りたくないですか?被害者の弘志さんは知らないかもしれないけど」