その後も、例の人の家に着くまで向井さんの独壇場で、南部君はうんざりしていたようだったけど、私は何だか楽しくなっていた。


トレンディドラマの俳優のような動きの向井さんに、的確に冷めた突っ込みを入れる南部君。


彩乃があんな事になったというのに、それを一瞬でも忘れさせてくれる二人のやり取りに笑った。


「さて、ここが話していたやつの家だけど……不気味だろ?」


向井さんに案内されて着いた家。


いや、家と言うよりは……小屋だ。


川沿いに建てられた、船小屋をいじったような木造の家。

ボロボロで、とても人が住めるような所ではなさそうな感じがするけど……本当にいるのかな?


「確かに不気味っすけど……こんな所にいるんですか?何か信じられないな」


私と同じ事を思っている南部君。


「ところがいるんだな。そして、驚くのは中に入ってからだ」


そう言い、小屋のドアを開けた向井さん。


木のドアが、枠に擦れてバインという情けない音を立てて開いた。












「うっ!く、くせぇっ!!」











小屋の中から漂う臭いに、誰よりも驚き、真っ先に声を上げたのは……向井さんだった。


「自分が驚いてどうするんすか。早く入ってくださいよ」