駅の待ち合い室を出て、向井さんの後に付いて南部君と一緒に歩く。


「ごめんね、森川さん。先輩、変な人でさ」


「んーん、大丈夫だよ。ちょっと驚いたけど、悪い人じゃなさそうだし」


お世辞でも、あれだけ褒められたのは初めてだし、悪い気はしないから。


大袈裟すぎる気はするけど。


「そ、そう。悪い人ではないんだよ……基本的には」


「おい、潤。聞こえてるぞ?基本的にはって何だよ。菜々に俺の事を話す時には、いかに素晴らしい人間かという事だけを伝えるんだ」


振り返り、満面の笑顔で大袈裟に手を広げて、空を見上げる向井さん。


こんなに自分に自信を持てたら、人生楽しいだろうな。


「はいはい。それより先輩、本当に例の人の家に向かってるんでしょうね?」


駅を出てから、ずっとこんな調子で歩いている向井さんが心配なのか、疑いの眼差しを向ける。


私だってそれは気になるかな。


案内しようというよりは、格好良い姿を見せようと必死になっているような気がするから。


その姿は、どこか作り込まれた動作のような気がしてならない。


「向かってないわけがないだろ?菜々に嘘をついて何の得がある?お前に嘘をつくならともかく」


前髪を掻き上げ、向井さんはそう答えた。