「そこまで言うなら、会ってみよう。ただし、覚悟はしておいた方が良い」


立てた指を軽く左右に振って、私の顔を見る。


覚悟って……そんなに酷いのかな?


彩乃があんな状態なら、他の人も相当だと考えた方が良いんだろうな。


「先輩、俺には教えてくれなかったじゃないすか。どうして黙ってたんすか?」


南部君が、ふてくされたような表情で向井さんに尋ねた。


すると、向井さんは「当然だ」と言わんばかりに鼻で笑って見せたのだ。


「お前に言うと、良い所を持って行かれるだろ。女の子が可愛かった時、俺が『しまった!』って思うかもしれないからな」


「……相変わらず下衆っすね」


やっぱり性格に問題があるよ、この人は。


外見は、誰が見ても完璧だと思えるのに、言わなくても良い事まで簡単に口に出してしまうとか。


南部君が会わせたくなさそうにしていた理由が、改めて良く分かる。


「とにかく行こうか。『あいつ』の機嫌も確認しないといけないからな」


向井さんの言う事は、どうも良く分からないな。


覚悟しろとか、機嫌を確認するとか。


それだけ聞くと、不良みたいな印象を受けてしまうけど……そうではないんだろうな。


もっとマイナスの意味で言っているのだろう。