駅の待ち合い室に移動して、横一列に椅子に座った私達。


私が真ん中で、右手に向井さん、左手に南部君という、妙なポジションで。


「ふむふむ、じゃあ菜々は、失敗して大切な物を失った人達に会いたいって言うんだな?」


話し始めると、急に真面目な表情になって、口調もまともになる向井さん。


最初からこの調子で話してくれたら良かったのにな。


「はい……私の友達が酷い事になってしまって。何て言うか……身体がドロドロに溶けてるんです。どうしてそうなったのか知りたくて」


「それはまた……興味深い話だね。一度俺にも、その友達を見せて欲しかったけど、多分無理だろうな」


あんなにテンションが高目の人なのに、意外と冷静と言うか、状況判断力が高い。


「そうだな……話が聞けるかどうか分からないけど、どんな願い事をして失敗したのか分かってるやつなら一人知ってる。でも……本当に会いたいの?」


どういう意味だろう?


私は始めから会いたいって言ってるのに、向井さんは会わせたくないな感じだ。


まるで、私に向井さんを会わせたくなかった南部君みたいに。


「ぜひお願いしたいです!」


強く、そう言った私を見て、何かを思い付いたように、向井さんは左手の人差し指を立てた。