「わわっ!来たっ!向井先輩!」


南部君が驚いたように声を上げる。


来るって行ってたんだから、そんなに驚く必要はないのに。


でも……。












「うおおおおっ!!お待たせーっ!!カワイコちゃーん!!」









まだ距離があるというのに、とんでもなく大きな声を出して、自転車をこぐ高校生。


その圧倒的なテンションは、南部君が驚くのも分かる。


駅前のロータリーを逆走して、私達の前で凄まじいブレーキング。


自転車を横滑りさせて止まった、向井先輩と呼ばれた人は、私を見るなり前髪を掻き上げて、真っ白な歯を見せて微笑んだ。


「あ、相変わらず凄い登場っすね……」


「このカワイコちゃんが、俺とデートしたいっていうベイベーかい?」


わけの分からない事を口走りながら、自転車を乗り捨てて私に歩み寄る。


身長が高くて、サラサラの髪の毛。


顔立ちも整っていて、ハーフかと思うくらいのイケメン。


制服も、ここらでは一番の進学校の物だし、見た目は文句の付けようがないくらい完璧な人。


「潤、チャリを片付けておいてくれ。学校のチャリ小屋から拝借してきたんだ」


「それ、犯罪っすよ……」


……人格に難ありのような気がするけど。