南部君が帰って来て、缶コーヒーを受け取った私は、それで手を温めた。


「やっぱり山中さんは、あれに失敗したんだろうね。一体どんな願いを叶えようとしたんだろう」


考える事は、私も南部君も同じか。


コーヒーを手の上で転がしながら、私の隣に座って呟いた。


彩乃本人から話を聞けないんだから、詳しい事は分からない。


いくら考えてみても、願いを叶えようとして失敗したという事以上の考えは浮かばなかった。


「彩乃はさ……あんな姿でも生きてるんだよ?信じられる?」


あまりの衝撃で、彩乃があんな姿になって悲しいとか、可哀想とか感じる事も出来ない。


あれは彩乃じゃなくて、何か別の物なんじゃないかなと、今となっては思ってしまう。


「失敗したら、大切な物を失うって言ったよね?先輩の先輩は失敗した後自殺した。他の人達はどうだったんだろうな?」


「身体がドロドロになったけど、彩乃は死ななかったんだよね?彩乃の大切な物って、身体だったのかな?」


お互いに疑問を投げ掛けるだけ。


それはそうだよね。


どちらも、その疑問に対する答えを持っていないんだから。


もしも、その答えを知っているとしたら……おまじないに失敗した人達くらいしか、思い浮かばなかった。