さっきまで怒っていたおばさんが、口をパクパクさせて何も言えない様子で。


その姿から察するに、部屋の中は言葉では表せないほど汚いのだろう。


私と南部君が、おばさんの脇から部屋の中を覗くと……部屋の入り口から真っ直ぐ。


窓の下で、例の物体にまみれた彩乃らしき人物がこちらに背を向けて座っていたのだ。


「あ、彩乃?」


絶句しているおばさんに代わり、私が声を掛けるとビクッと身体を震わせる彩乃。


何か……変だ。


座っているとは言え、彩乃の身体がいつもより小さく見える。


そして……ゆっくりと振り返る彩乃の姿に、私の予感は当たっていた事を知る。









「誰カ……ソこにイるノ?何も見エナいよ」









「ひっ!!」


私とおばさんが同時に声を上げた。


彩乃の顔が……いや、手も足も、何が原因でそうなったのかは分からないけれど、ドロドロに溶けているかのように崩れていたのだ。


目は既に流れ落ちたのか、黒い空洞が私達に向けられている。


ズルリと髪も、表面を滑るように床に落ちて。


這うようにこちらに向かってくるその姿があまりに不気味で。


おばさんも私も腰を抜かし、廊下の壁まで後退して、ガタガタと震える事しか出来なかった。