お互いに悲しげな表情を向けたまま立ち尽くす。


何を話しても、南部君が儀式を始めてしまった事に変わりはないし、止めようもない。


19時24分。


問題なく歩く事が出来れば、そろそろ終わってもおかしくない時間だ。


「気になる?もう終わるくらいの時間だからね。菜々が言ってた呪い……どうして呪いが、今みたいな噂に変わったんだろう」


「分かりません……元々は願いを叶えるモノだったのかもしれないけど、一番最初に人が死んだから、そう言われるようになったのかもしれません」


呪いなんかじゃないと、そう信じたい。


私のせいで儀式を行う事になってしまった南部君が、そんな負の力に頼っているとは思いたくない。


どうか、無事に終わりますように……と、祈っていたその時だった。













ピロリロリン。








ピロリロリン。












向井さんの制服のポケットから、携帯電話が鳴る音が聞こえたのだ。


それを待っていたかのように、素早く携帯電話を取り出し、通話ボタンを押して耳に当てた。


「終わったのか?ああ、さっき起きた。良くやったな。次は潤が行かないように見張ってやるよ。早く帰ってこい」


向井さんの表情が柔らかくなった。