二人は悩んでいる様子で、私がいるというのに目に入っていないみたいだ。


「だったら、残された手段は一つしかないな」


口を開いた向井さんに、南部君が頷く。


「分かってますよ。……が、……を……」


あれ?声が聞こえなくなってきた。


それだけじゃない。


二人の姿がなくなって、私の姿も見えない。


ただ、深い闇がそこにあって、私の意識も薄れていく。











ぐっすりと眠る事が出来たのだろう。


次に気付いた時には、私を呼ぶ声が聞こえた。


「……菜々、まだ寝てるのかい?お目覚めのキスが必要なのかな?」


この声は……向井さんの声?


目を開けてみると、私の部屋じゃない、白い天井が見えた。


視界の中に、向井さんもいる。


……えっと、ここはどこだったかな。


私の部屋じゃない事は確かなんだけど。


どれだけ眠っていたのか、頭の中がボーッとしている。


上手く状況が把握出来ないけど、上体を起こした私はいつもとは違う感覚に包まれていた。


「やあ、おはよう子猫ちゃん。気分はどうかな?」


広い部屋に私と向井さんの二人きり。


そういえば、南部君の姿が見えない。


「……南部君は?」


向井さんは、何も答えなかった。