「どうって……森川さんを指差して、後ろに幽霊がいるって言ってたでしょ?山中さんだって、森川さんより可愛くなりたいって思ってたから、大切な物を……自分の身体を失ったんじゃないですか?」


うんうん……って、あれ?


幽霊は確か、失った物は戻らないって言ってたような。


だとすると、彩乃の大切な物は身体ではないのかな?


「弘志の方はそうだとしても、彩乃ちゃんはそうじゃないかもしれない。彩乃ちゃんの大切な物は……菜々との友情だったとしたら?」


もしもそうだとしたら、見事に私と彩乃の関係は崩れたよ。


元に戻らないってお墨付きまでもらったから、これからずっと仲が良くなる事はないんだろうな。


……いや、もしかすると、私の大切な物が彩乃との関係だったのかもしれない。


自分の為に願い事を叶えずに、彩乃を元に戻したいと願った私の、大切な物だ。


「それじゃあ森川さんがあまりにも可哀想じゃないですか。友達に酷い事を言われて、命まで狙われてるなんて」


南部君のその言葉に、私の予想は外れたのだという事を思い出した。


そうだ、夢の中だから実感がなかったけど、私は幽霊に殺されそうだったんだ。


私の大切な物は命。


それは変わる事がない、残酷な真実だった。