「何だこれ……ゼリーか何かか?」


誰よりも早く家に上がり、点々と床に落ちているその物体に近付いたのは南部君。


触るわけでもなく、床に這うような姿で、マジマジと見詰める。


匂いを嗅いでみたり、息を吹き掛けてみたり、やれる事は何でもやっているという感じだ。


「どうしたの?菜々ちゃん……って、何これ!一体何を溢したの!?」


おばさんも、玄関に入るなりその光景を見て唖然としている。


興味深そうに見ていた南部君が顔を上げて、これが何なのか分からないと言った様子で首を傾げた。


「何だろ……匂いがないけど、プリンみたいにプルプルしてる」


「やだぁ、気持ち悪い。彩乃が何かしてるのね。あの子は学校休んで何してんの!」


ついにおばさんが怒った。


靴を脱ぎ捨て、その物体が何なのかを確認しようと、二階の彩乃の部屋に向かって歩き出したのだ。


「彩乃!!一体何をしてるの!学校も行かずに家をこんなに汚して!!」


その怒鳴り声でハッと我に返った私は、靴を脱いでおばさんの後を追って二階に向かった。


階段にもその奇妙な物体が落ちていて、上に行くにつれ、その間隔も狭くなっている。


二階に上がると……彩乃の部屋の前で、おばさんが呆然と立ち尽くしていた。