「えっ?」
グラッと身体が揺れて、車道の方に弾かれた私。
二人とも手を離しているのに……どうして。
歩道から車道へと、倒れてしまいそうになった時、私の手を南部君が掴んで、グイッと引き寄せたのだ。
バランスを崩していた私は、そのまま南部君に抱き締められて。
生きるか死ぬかという所で、私は死から逃れる事が出来たのだ。
「潤!走れ!早く渡るぞ!!」
ここが、いかに危険かという事を理解したのだろう。
私達に歩道橋の階段を上がらせて、国道を渡り、逃げるように走り続けた。
そして……しばらくして、向井さんの家に到着した頃には、私の顔から完全に血の気が失せていたのだ。
「すみません……森川さんが車に轢かれるって事しか言わなかったんですね」
ハアハアと、息を切らせながら向井さんに謝る南部君。
「言っても仕方ないだろ。それにしても……かなり厄介だぞ、これは」
自分の事を言われているのに、私にはなぜか他人事のように聞こえて。
死の恐怖からか、まともに物事を考えられなくなっていた。
身体が、自分の物じゃないようにフワフワしている。
今、何が起こっても、私は何も出来ずに死ぬんだろうなと思えた。