そう……思っていたのに、向井さんに連れられて歩いていたら、目の前は国道。


しかも、歩道橋の前までやって来ていたのだ。


「な、何で……嫌っ!ここは……ここはっ!!」


うつむいていたから、どこを歩いているとか分からなかった。


まさか、向井さんが私をこんな所に連れて来るなんて。


夢で見た光景と同じだ。


所々ペンキが剥げた歩道橋の塗装。


街路樹に、放置された自転車。


ここで私は、幽霊に突き飛ばされて死ぬ!


「何だ!?菜々!落ち着け!どうなってるんだ、潤!!」


この場から逃げようとする私の腕を掴み、暴れる私を押さえ付ける向井さん。


「あ……すみません!歩道橋のある国道で森川さんは車に……言ってませんでしたっけ!?」


「聞いてたらこんな道を選ぶかよ!!菜々!大丈夫だ!俺達がいるだろ!」


道行く人が、一体何事かと私達を見ている。


二人がかりで抑えられて……怖くてたまらないけど、何とかパニック状態から脱した私は、何度も深呼吸をした。


「よ、良し……落ち着いたな。ここはまずい。早く渡ってしまおう」


ゆっくり私から手を離した向井さんが、歩道橋を指差してみせた。


南部君も続いて手を離した瞬間。


私は誰かに押されたのだ。