友達だと思っていたのに、私はそう思われていなくて、元に戻したのも私の自己満足。


頼んでもいない事をやったお節介だと、彩乃は思っていたんだ。


もう友達じゃないのかな。


そう考えると寂しくて……涙が止まらなかった。


「もう……帰る」


震える声でそう呟いた私に、彩乃は何も言ってはくれなかった。


重い空気の中、病室を出て、エレベーターへと向かって。


二人がいるロビーに、どうやって辿り着いたのかも分からないくらい色んな事を考えていた。


私は長椅子に腰掛けて泣いていて、南部君と向井さんが慰めてくれたけど、ほとんど覚えていない。


晴れそうにない心のモヤモヤを抱えたまま、私が泣き止んだのはそれから30分ほど経ってからだった。









「そんな事を言われたのか……気にする事はないさ。今は無理でも、いつか菜々に感謝する時が来る」


私の頭を優しく撫でてくれる向井さん。


確かに彩乃の事は悲しかったよ。


だけど、時間が経って、私の心には別の不安がある事に気付いた。


悲しみで隠れていた黒い影。


場所は違っても、彩乃に言われた事は正夢になってしまった。


それはつまり、私が車に轢かれてしまうのも、正夢になるかもしれないという事だ。