あれは彩乃の家で言われたただの夢。


弘志さんもそこにいたから、正夢になる事はないと思っていたのに。


目の前の彩乃は、怒りの表情を私に向けていて、夢ではない迫力を感じる。


「元に戻してなんて頼んでないのに、そうやっていつも勝手に世話やいてさ!私の事を何も出来ないやつって見下してるんじゃないの!?」


「や、やめてよ……そんな風に思った事なんて……私は一度も……」


友達だと思っていたから、彩乃を助けたかっただけなのに。


彩乃はそう思ってくれていなかったと言うなら、本当に私は何の為に儀式をしたんだろう。


抑えていた涙が目から溢れ、頬を伝って制服の上に落ちた。


「一度もないなんて言わせない!いつもいつも私を見下してたくせに!『一人じゃ何も出来ないんだから』って、言ってたじゃない!」


確かにそれは言った事があるけど……何も見下して言ったわけじゃないのに。


彩乃は、そんな風に捉えていたのかと思うと、悲しくてたまらなかった。


友達だと思っていた彩乃は、ずっと私を鬱陶しく思っていたって事だよね?


南部君の事だって、私が彩乃から盗ったと思われてるんだろうな。


……なんだ、私って本当にバカみたいじゃない。


何の為に儀式をしたんだろう。