これは……おばさんが帰って来たのかな?


彩乃のお母さんは、どこかの施設で看護師をやっていると聞いた事がある。


こんな時間に帰って来たという事は、夜勤明けなのか、休日で出掛けていたかのどちらかだろう。


車を車庫に入れて、おばさんが玄関の方に歩いて来た。


「あ、やっぱり菜々ちゃんだ。どうしたのこんな時間に。学校をサボったんじゃないでしょうね?」


最初は優しく、徐々に怖い口調になって行く。


おばさんは私が小さい頃から知ってるし、遠慮なく怒るから、悪い事は出来ないんだよね。


「あ、いや……彩乃が学校に来てなくて。電話しても繋がらないし、メールも返事がないから心配で来たんだけど」


学校を抜け出したのは間違いないけど、嘘は言ってない。


彩乃には悪いけど、おばさんに怒られるのはお願い!


「彩乃が学校に行ってないって!?あの子は……分かったわ。とりあえず上がりなさい」


良かった。


怒られなくて済んだみたいだ。


おばさんが玄関のドアを開け、私達を中に入れてくれたけど……家の中を見た瞬間、その妙な光景に私は息を飲んだ。


家の奥から、玄関横の階段へと続く廊下……。


そこが、何か液体のようにも見える、白っぽい物で濡れていたのだから。