造りが複雑な病院。


見取り図を見なければ、私だけではとても辿り着けるとは思えない。


向井さんは、彩乃の部屋がどこにあるのか分かっているのか、迷う様子もなく歩いて、エレベーターに乗った。


到着した五階で病室の番号を確認して、その部屋の前まで来ると、私を見てドアを指差したのだ。


「開けるのは菜々だろ。友達が元に戻ってるか確認しないとな」


フフッと笑い、私の背中を押してくれる。


コンコンとドアをノックして、スライドドアをゆっくりと開けた私は……ベッドの上で窓の方を見ている、見覚えのある横顔に安心感を覚えた。


こちらに顔を向ける彩乃。


その顔は、崩れ落ちる前の物で……黒い空洞だった目も、間違いなく元に戻っていた。


「はい……どなたですか?」


「え?あ、彩乃。私だよ、菜々だよ」


「菜々?本当に菜々なの?」


目を細めたり、開いたり。


そうか、元に戻ったから、視力も悪い状態なんだね。


何とか私だという事を確かめようとしているけど、視力が悪い彩乃は分からないようで。


「ごめん、メガネがないから良く見えないや。でも、菜々なんだよね?良かった……一人で退屈してたんだ」


どうしても見られないと思ったのか、笑ってごまかしていた。