「そんなの、殺人じゃないか。いくらゴタゴタが嫌だからって、薬を盗んだ事を隠すなんてね。その木村さんが死んだのは、バチが当たったからだよ」


「うん。そうだよね。悪い事をしたら、悪い事が返って来るんだよ」


その幸村さんが、私を襲った笑う幽霊だとは、まだ南部君には言っていない。


この儀式は願い事を叶えるモノじゃない。


元々は人を殺す為の呪いなんだから。


話せば、南部君を心配させる事になるから。


そんな呪いに巻き込まれているなんて知ったら、何て思うか。


幸村さんの話をしたんだから、その後何が起こったのかを話そうとも思ったけど。


結局、病院に着くまで、他愛のない雑談をしながら歩いていた。


これで良いんだ。


南部君と、歩道橋のある国道に近付かなければ、きっと死ぬ事はない。


そう思いながら。


「うっ!な、何でだよ……」


病院の中に入って、南部君が驚きの声を上げた。


何の事だろうと、首を傾げてロビーに視線を向けると……。









「待っていたよ、愛しの子猫ちゃん」









正面の長椅子に腰掛けて、私達を見ていたのは向井さん。


「何でいるんだよ……」


ボソッと呟いたその言葉に、私は思わず笑ってしまった。