「もしかしてそれって……馬場君?」


「いや、男子生徒の名前までは知らないけど……菜々の知り合いは凄いな。そこまで調べたのか?太ってる丸刈りの人だったような……」


遠い昔の記憶を引っ張り出すように、顔をしかめて思い出す。


間違いないよ、それは馬場君だ。


願いが叶う……大切な物を失うか。


「どうやら、その男子生徒と先輩は仲が良かったみたいでね。先輩に嫌がらせをしていた女子グループのリーダーを殺して、仲が良かった男子生徒を失った事って話が大きくなって、呪いなんて噂が流れたってわけさ。人を殺す代わりに、大切な物を失うって呪いが」


なるほどね。


……あれ?


でも待って。


私達が知っている話は、「失敗したら大切な物を失う」だよね?


だけど、お父さんの話では「人を殺す代わりに、大切な物を失う」だ。


つまり、成功しても大切な物を失うという事で、私達が知っている話とは違う。


それに、幸村さんの最後。


あれは、どうみても人を恨んでいるような感じじゃなかったのに。


木村さんが薬を盗んだ事に気付いたようだったけど、馬場君への謝罪の言葉を呟いただけ。


呪いとなって残るような雰囲気は、全く感じなかったのに、どうしてこんな事になったのか。