焦りの色は、幸村さんではなく馬場君の方に見える。


窓の外が暗くなっている事に気付いてからは、何度も外を見て、早く終わらせようと。


でも、チラチラと幸村さんの方を見て、悩んでいるような表情。


馬場君は分かりやすいな。


早く帰りたいけど、幸村さんと少しでも長く一緒にいたいと思ってるんでしょ?


言葉に出さなくても、その行動が私に教えてくれているよ。


「あ、あのさ、幸村さん。明日の学校祭、来るよね?」


コミカルに動く馬場君を見ていたら、何を思い立ったのか、急に口を開いてそんな事を尋ねた。


「うん。最後の学校祭だもん。出来るだけ来たいな」


絶対に……とは言えないところが、幸村さんの悩みなんだろうな。


登校出来るかどうかは、明日の体調次第。


それによっては、自宅で休んでいるしかないかもしれないから。


「じゃ、じゃあ……明日は、ぼ、僕と一緒に回らない?」


お、良く言った、馬場君。


毎日手伝ってるんだもん、幸村さんが好きなんだね。


そう言われた幸村さんはというと……。


驚いたような表情で、作業の手を止め、馬場君の顔を見ていた。


こんな事を言われるなんて思いもよらなかったのだろう。


白い顔が、少しずつ赤く染まった。