「幸村さん、俺の作業が終わったから手伝うよ」


教室から、慌てて出て来た一人の男子生徒が女の子に近付いた。


外見はそんなに良くはない。


ちょっと太っている丸坊主の男の子。


「えっ……あ、ありがとう馬場君。毎日ごめんね」


「良いんだって。幸村さんがせっかく作った物を壊すやつらが悪いんだよ」


そう言い、女の子……幸村さんの隣に腰を下ろす馬場君。


毎日ごめんねという事は、馬場君はずっと幸村さんを手伝っていたんだね。


こう言っちゃなんだけど、まるで釣り合いが取れていない二人だな。


だけどそれが、何だか微笑ましく見える。


馬場君が手伝い始めてから作業のスピードが上がり、完成まで後半分というところ。


でも、窓の外はうっすらと暗くなり始めている。


「もう帰る生徒もいる……」


夢の中、誰に言うわけでもなく、私はポツリと呟いた。


スピードが上がったとはいえ、まだ半分。


他にも作業をしている生徒はいるけど、幸村さんと馬場君のこの作業が一番遅くなるんだろうなという事は、私にも分かる。


一つ、また一つと教室の照明が消えて行く。


それでも、この作業を楽しむかのように、丁寧に物作りをしている幸村さんの表情に焦りの色は見えなかった。