「私は、学校に来たいから良いの。少しでも皆の役に立ちたいだけだから」


女子生徒の言葉を払い除けるように呟いた女の子。


その女子生徒を見ようとせずに、模造紙に印を付けている。


「だーかーらー!あんたが来ると、皆が気を遣うだけだろ?ストレスで胃潰瘍になったらどうしてくれるの?」


こういうやつって、いつの時代もいるんだな。


わけの分からないイチャモンつけて、いじめようってバカなやつが。


そう言い、女の子の肩に腕を回す。


その手は、女の子の左胸辺りで何やら動いているけど、何をしているんだろう?


「そんなので胃潰瘍になんてならないよ。人間はそんなに弱くないから」


淡々と話す女の子に苛立ちを覚えたのか、女子生徒が「チッ」と舌打ちをして立ち上がった。


こういう類いの生徒は、そんな事を言われたら怒りそうなもんだけど……ずいぶんあっさりと引き下がったな。


「はいはい、だったら終わるまで一人でやってなよ。皆、行くよ」


その手から、小さなプラスチックの箱のような物が顔を覗かせていたけど……あんなの持ってたかな?


雑談をしながら、廊下を歩いて行く五人組を見送った後、私は女の子に視線を戻した。


今の事を気にする様子もなく、作業をしていた。