普通なら、先生に言い付けて、犯人探しをしてもおかしくはないけど……この人は違うのかな。


模造紙を広げて、鉛筆で大体の大きさを描いて、壊された展示物と同じ物を製作している。


慈しむような視線を模造紙に落として、クラスの遠足や体育祭の時の写真に微笑む。


少し細いかな……とは思うけど、この女の子を好きにならない人がいるのかと思うくらい優しい表情。


自分が小さく写っている物を見付けると、フフッと笑みを溢す。


いつの間にか、私はこの女の子に魅了されて、近くに腰を下ろしてその姿を見ていた。


写真の一つ一つの場面が、大切な思い出なんだろうな。


なかなか学校に来られないからこそ、全ての瞬間がこの女の子には大切なんだ。


その想いは、黙っていても伝わって来る。












「あれ?何だ、まだそれやってんの?明日が学校祭なのに間に合うの?」


教室から出てきて、女の子に向かって突然そう言った女子生徒。


五人のグループで……お父さんが言っていた人達なのだと、その姿を見ただけでピンと来た。


「そんなの誰かに任せて休んでりゃ良いんだよ。暇そうなやつらに任せて……学校に来なけりゃ良いのに」


女の子の隣で屈んだリーダーっぽい人が、そう呟いた。