……私はまた、夢を見ている。
少しは体調が良くなったと思うけど、やっぱりまだ調子が悪いのか、悪夢っぽい雰囲気。
学校の廊下、音楽室の前に立っている。
また儀式をする夢を見るのかなと思ったけど……窓の外は明るくて、廊下には生徒もたくさんいる。
その中で、一番近くの教室から、段ボールと模造紙を持った女の子が出てきたのだ。
あの幽霊!?
いや、少し雰囲気が違う。
表情は穏やかだし、怖いという印象も受けない。
色が白くて……顔立ちの整った美人。
ああ、そうか。
お父さんにあんな話を聞いたから、夢に見ちゃったんだ。
それにしても……本当に美人だ。
顔もそうだけど、屈んだ時に髪を耳に掛ける仕草や、その指の流れ。
膝の付き方に至るまで、女の私でさえみとれてしまう。
お父さんがメロメロになるのも、これだったら分かるよ。
「はぁ……どうしてこんな事するのかな。せっかく作ったのに」
幽霊……いや、この女の子が、前日に作ったであろう、カッターナイフか何かで切られた展示物を広げて溜め息をついた。
それは、修復するにはあまりにも無惨な姿だった。